書評:『ユニコーン:ジョルジュ・サンドの遺言』 原田マハ著

書評
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wikipediaより引用 

原田マハ氏

原田マハ氏は1962年東京生まれ。森美術館設立の際の準備室で働いたのちニューヨーク近代美術館に勤務した実績のある国際的なキュレーターです。

美術品そのものだけでなく、美術館事情にたいへん詳しい専門家ですから、小説に出てくる美術関連のエピソードや知識は興味深く信頼して読むことができます。

私は一人の作家を連続して読み込む癖があるので、原田さんの作品が続いています。

美術好きということもあって、彼女の本は興味深く何冊か読みました。

が、11月半ばでそろそろ切り上げ、次の作家さんに移ります。

尚、私の場合は、【たくさん読んでいる】=【好きな作家】ではありません。

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wikipediaより引用

ユニコーン:『貴婦人と一角獣』

今回の作品はパリのクリュニー美術館、およびアンジェのタピスリー美術館に所蔵されている『貴婦人と一角獣』の一連のタピスリーが題材となっています。

タピスリーというのは織物ですね。英語発音だとタピストリー。

中世にピークを迎えた芸術作品で11~15世紀ごろのフランスの古城で良く目にします。

クリュニー美術館には、この貴婦人と一角獣が描かれた様々なポーズのタピスリーが6枚所蔵されています。

詳しい作者も意味も不明な神秘的な作品ですが、現在の研究では6枚は6つの感覚を表しているのでは、といわれています。

ユニコーン・一角獣は伝説上に生き物で、清らかな処女にしか近づかないといわれています。よってこの清楚な美しい貴婦人は、正しい心をもつ処女ということなのでしょう。

赤い背景に紡ぎだされる豪華な絵巻物は本当に美しいですね。

私はパリのクリュニー美術館のほか、ロワール地方アンジェの美術館、アンジェ城(要塞)、アゼ・ル・リドー城などで関連のタピスリー(タピストリー)を鑑賞しました。

バインダーも持っています☆ 

一時期とてもすきなモチーフでした。

『ユニコーン:ジョルジュ・サンドの遺言』書評

音楽家ショパンをはじめ、数々の男性と浮名をながしてきたジョルジュ・サンドがやや生活困窮したイメージで描かれているというのがちょっと驚きました。

ここでは子供を連れたサンドがある古城で老婦人とすごした数日間が描かれています。

オカルト的?な内容で、ちょっと戸惑いました。

そしてジョルジュ・サンドである必要性があまり感じられなかったのですが。

このタピスリーの出自は不明で謎に包まれているため、オダリスクの美姫のお話が出てきたのは興味深かったです。

ジョルジュ・サンドを使うのであれば、もうこのオスマンの女性の物語を1作彼女が創作してしまうという話でも面白かったかもしれません(オカルトに行くよりは)。

それにしても、装丁が本当に美しいです。

『サロメ』の装丁もとても素晴らしかったですが、こちらも負けず劣らずの美しさ。それに色調や挿絵が可愛い。

元の作品が赤ベースということもあり、豪華絢爛です。本棚に1冊あるだけで心躍る壮麗さ。

これもやはり美術専門家の原田マハ氏が監修したからこそ、ですね。

電子書籍やネットでいろいろなものが読める時代ですが、手に取って読書する喜びをいっそう増幅してくれるのはやはり美しい装丁本です。

一流のアートを見てきた原田氏のセンスで、こういった完成度の高い装丁の本を今後もいくつか発行してもらいたいな、と感じました。

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感想(1件)

『裸のマハ』

著者のマハという名は、美術愛好家ならすぐ連想するとおり、ゴヤの『裸のマハ』からとったペンネームのようです。

この絵は私もマドリードのプラド美術館で視ました。アングルやトリオゾンとはまた異なる、肌の輝きが印象的でした。顔や構図よりも、とにかく光の表現だけよく覚えています。

あと、映画『タイタニック』でローズが長椅子に横たわってヌードのポーズをとりますが、それを見た時にこの『裸のマハ』を思い出しました。構図がそっくり。

ヌードの女性が美しくみえる普遍的ポーズ、ということでしょうか。

原田氏の作品書評は私の好きな美術関連のお話に通ずるため、話題が連続しました。

買うなら装丁の美しさで『サロメ』、小説として読むなら『楽園のカンヴァス』が私の一押しです。

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