こんにちはAmyです。
私は若い方達にぜひ海外に出てor海外とつながってキャリアを展開してもらいたいと思っています。
その際、語学を障壁に感じる方がほとんどですが、これからGoogle Glassやスマホで自動翻訳がもっと進化していくでしょうから、それほど問題にはならないと思います。
トリリンガルの私からみると語学の問題はかなりのスピードで解消されていくと考えています。
最も難しい焦点となるのは価値観の違いからくる障壁です。これを若いうちにクリアしておくことは後々大きなアドバンテージとなるでしょう。
今日はこのあたりの事を「パリ症候群」という海外でのうつ病の話を交えてお話します。
☆ パリ症候群とは
☆ フランスでの価値観のギャップ①「お客様は神様」
☆ フランスでの価値観のギャップ②「順番を守る」
☆ 価値観は当然ちがう
☆ パリ症候群とは
精神科医の太田博昭先生が1991年に発表なさった著書で詳述されている、異文化圏における適応障害のひとつです。
「おふらんす」というオシャレでスタイリッシュなイメージと憧れを抱いて渡仏した若い女性が、現実とのあまりのギャップにカルチャーショックを受けてしまう。
フランスの個人主義に適応できなくなり、フランス人が自分を差別していると妄想を抱いてしまう。
私もフランスに住んでいた頃、こういったパリ症候群の事例はたくさん見てきました。
フランスというだけで何でもオシャレに感じてしまう風潮がありますし、まぁ、実際にフランス人は安い服でもかっこよく着こなしたり、お店のディスプレイは非常に可愛くおしゃれです。
パリ症候群と呼ばれる女性たちは、憧れた文化に失望しているわけではなく、フランスでの人付き合いに疲弊しているといえます。
フランスは欧州の中心に位置し、他国と国境を接していますから陸路であらゆる人種が流入してきます。北アフリカからの移民も多く、アジアからの出稼ぎ組も多い。
いわゆる「人種のるつぼ」です。
様々な宗教、民族、国籍の人々がパリに集結しており、それぞれが様々な価値観で行動しています。
宗教の自由が認められていますので、職場や、歩道、公園などでイスラム教徒の方が突然お祈りを始めることもあります。
ものすごくたくさんの異なる価値観が混在しているんですね。
比較的価値観が統一されている日本とは違います。
一口にフランスでの体験、といってもそれはフランス人だけではなく
フランス語を話す多様な外国人との体験でもあるのです。
そんな中で日本人はどのように疲弊していくのでしょうか。
例えば、外国人が一生懸命日本語を話しかけてきたら、私たちは何とか聞き取ろうとしますね。
わからない時は「ごめん、わからないわ。英語で話してみて」というかもしれません。
基本、かなり外国人に、気を使ってくれます。
でも、フランスの場合は外国人だらけなので別に気は使ってもらえません。
フランス語の発音は日本人には非常に難しいので、文法が正しくてもつたない発音だと通じないことがあります。
フランスですと、聞き取ろうと優しい反応をしてくれる人もいますが、
露骨に「はぁ?何言ってんのかわからん?」という嫌そうな表情をする人、
「何を言いたいのか理解できない。きちんとしゃべってくれ」とまくしたてる人、
無言でこちらをちらりと見た後、対応せずに無視or立ち去ったり、次の客に声をかけたりする人、
が本当にいます。それもかなり。
普通に話しかけて嫌な顔されたり無視されるなんて、これでかなりショックを受けます。
そりゃそうですよね。
このような日本ではあまり経験しない反応にかなり頻繁に遭遇します。
礼儀作法も大きなギャップがあります。
例えば、テイクアウト式のカフェテリアやファーストフード店が込み合っている時、相相席を尋ねられ、こちらが快諾した場合。
後から来たその人は食べ終わったあと、汚く食べ散らかしたトレーや食べこぼしを片づけずに、そのまま席を立ちます。
日本人なら、まだ食べている人に気を使って、汚い食べ残しは片づけますよね。
彼ら、そのままの事が多いです。
もっとひどいと、そのあとにさらに別の人が「相席いいですか?」とそこへ座ります。
前の人の汚い食べ散らかしトレーを、私の方へぐぐぐーっと押しやって自分のスペースをつくるんです。
「えぇ??自分でトレー片づけてきなよ」。純ジャパはびっくりです。
食べる気しませんね。
日本だと、食事中のひとの立場を考えたり、礼儀作法の観点からこういう事はおこりにくいです。
あちらではやはり価値観が違いますし、トレーを片づけるのは清掃スタッフの仕事だから自分がやる必要はない、と認識しています。
それによって、まだ食事している人が不快だとは想像しない場合が多いんです。
悪気はないんですよ、これ。
こういったことが頻繁に普通におこり続ければ、フランスに過大なイメージと憧れをもっていた若い女性の心は傷ついていきますよね。
パリ症候群は若い女性に限ったことではありません。
出張や駐在できた日本人男性がフランス人に対して怒り散らして疲弊していく場面もよく見ます。
日本で生まれ育った場合、相手を慮る(おもんぱかる)、お客様は神様、和を乱すことは恥、などなど、とても細やかで洗練された文化に接しているわけです。
非常に似た価値観をもつ民族が、ほぼ単一で生活してきたため、異文化のギャップというものは体験する機会が少ないです。
それに対して、フランスでは外国人が多いこともあり、まわりの意見や状況判断よりも、自分の意思が最も重要な個人主義です。
統一された価値観がないので、自分の価値観を常に主張することが当たり前になっています。
最近でこそ、日本でも海外からの観光客が増え、そのマナーの悪さが話題にのぼりますが、彼ら側の価値観からみればマナーが悪いわけではなく、単に習慣が違うだけなのです。
日本においては、こういった行動はマナー違反だと諭せば、海外旅行へ来るレベルの人達ですから理解はします。理解して受け入れるかどうかは別ですが。
☆ フランスでの価値観のギャップ①「お客様は神様」
さて、日本では、お客様は神様ですが、フランスでは店と客は対等です。
星付きレストランに、そぐわない格好でいけば入店を断られますし、無理に入ってもバックヤードに近い狭い席しかあてがってもらえません。
これは、フランスにまだ社交界というものが残っている影響もあります。
日本は戦争に負け、一億総中流という時代が長く続きましたので、お客様の階層がほとんど中流層です。社交界や超富裕層が少ない国です。
(この話も別の機会に書くつもりです。)
例えば、日本人はブランド物が大好きで、若いOLさんが分割払いでエルメスを買ったり、ボーナスでがんばってヴィトンを買ったりしています。
服や靴はカジュアルブランドで賃貸ワインルームに住んでいるOLさんが、バッグだけは高級な有名ブランドのものをいくつか持っている。よくあることです。
パリでは、エルメスのバッグを持っている人はほぼ全身高級ブランドで高級住宅街に住んでいます。
そういう生活レベルを維持している富裕層の人が買うもの、それが高級ブランドです。
ヴィトンのバッグを持って、地下鉄に乗るというのは生粋のフランス人にとっては奇異に映ります。ヴィトンのバッグをもつ階層の人は、まずもって地下鉄には乗りません。
地下鉄に乗る階層は、ヴィトンを持つ階層とは違うからです。
最近は高級ブランドもアジア客こそ最大のお得意様ですから、ずいぶん態度が変わりましたし、パリは外国人が多いですからブランドバッグを持って地下鉄に乗る人も目にします。
しかし、根底にはフランスでは上記のような考え方があるのです。
ですので、フォーブル・サントノーレ街のエルメス本店に行っても、扉さえ開けてもらえない普通の日本人女性というのはいます。
仮に中にはいれても、店員に無視されることもあります。
一つスカーフやバッグをもっているだけで「私はお客様よ」と思っていても、本店は常連の富裕層「本当のお客様」へ接客することが目的ですので、販売員は自分が相手にする客ではない、と判断して無視しているのです。
こういう人は、デパートに入っているエルメスや免税店で買い物するべきなのですが、「本店で買い物したい」中流層の日本人はたくさんいるのですね。
日本のデパートでものすごく丁寧な接客になれている彼女たちはひどいショックをうけますし、馬鹿にされたことで腹がたって仕方がありません。
エルメスは高級ブランドですが、
普通のショップやスーパーマーケットでも、フランスの場合はお客様最優先ではありません。
客と販売員は対等だと思っていますから、「今から食事だから後で来てね」と、お客さんを後回しにすることも普通にあります。
また、買い物の最中に、別のサイズを出してもらいたい時や用事がある時に、店員がずっと携帯電話で話し中という場合、日本人は電話が終わるまで待ちますね。
というか、店員の方が気づいて電話を切ります。普通。
フランスでは、電話中の店員に「サイズを出してもらいたいので、お願いします」と強引に声をかけなければ、たぶんずっと待たされます。
店員は言われて初めて気づく場合が多いです。
電話中の人を遮って自分の要求を伝える、という日本では失礼なことを、海外ではあえてしなくてはいけない。
価値観が違うからです。
でも、夢をもって憧れてきた海外で日々こんなことが続けば、誰でもつらいですね。
特に、日本のデパートでのお買い物は女王様のように扱われることも多いわけで、それを日常的に経験している日本人女性が
うつ病になるケースが多いのはよくわかります。
☆ フランスでの価値観のギャップ②「順番を守る」
順番を守る、ルールを守る、列に並ぶ
これも日本では当たり前です。
日本は異常な満員電車が存在しますから、駅のホームでは皆さん整列して待ちます。
スーパーのレジでも、銀行でも、順番どおりに並びます。
ちなみにイギリス人もきちんと列に並ぶ民族ですね。
フランスの場合は、中東やアフリカ系の人は並ぶ習慣がないので順番を守るという観念があまりありません。
さすがにスーパーや銀行などでは、店舗側が列を誘導しているのでトラブルにはなりませんが、そいうった誘導列がない場面では、普通に順番抜かしをされます。
カフェなんかで、席取りをするときも、日本人なら周りをみて「あなたの方が先でしたから、どうぞ」という感じですが、
あちらはそういう配慮はありません。
なんでも、自分の立場を主張しないとスル―されてしまいます。
笑顔で「ムッシュー、私、先に並んでいたんです。だからそこは私が座りますね!」と、いわなくてはいけません。
マルシェのような露店でも同じですね。
客が群がっているような店では、自分から店員にアピールしなければあちらから気を使ってくれることはありません。というのも、海外にはいろんな人がおり、買わないけど最前列で商品を見てるだけ、という人も本当にいるからです。
それより、買う意思を明示している客からさばいていこう、という考え方です。
自分の存在、意思、要求を主張することがとても大切なのです。
☆ 価値観は当然ちがう
色々なエピソードを話してきましたが、これはフランス人や外国人が悪いわけでも、悪意を持って日本人を差別しているわけでもありません。
単に、価値観が違うのです。
反対の立場からみれば、
外国人にとっても、日本人の行動には驚かされたり不快に思うことがあります。
例えば、外国語がわからなかったり、ごまかす意味で日本人は苦笑いや照れ笑いをすることがよくありますが、この笑いを「馬鹿にされている」と感じる外国人が意外と多いんですよ。
また、日本人は靴を脱いで家屋にあがる習慣がありますよね。
その延長で日本人女性が海外の空港のベンチなどで靴をぬいで横座りをすることがありますが、これはある国では男性を誘う行為で、もっと別の国では破廉恥でふしだらな行為と受け取られます。
お互い、違う文化で歴史をつむいできたのですから、価値観が違って当然なのです。
そう、価値観が違うんですよ。
日本は、その事実を「違いとしてとらえられていない」気がします。
違うことが悪いことだ、悪意だ、という風に感じてしまうことが多いです。
日本にはあまり異文化が流入しておらず、文化的な価値観の違いになれていませんから、当然です。別に日本人が悪いわけではありません。
フランスのような国は、歴史的にも異文化が混在しており、体感的に価値観の違いを受け入れています。それが当たり前のこととして育ったからです。
私は若い方達に海外へでて活躍してほしいと思っていますが、
ぜひ、このように価値観が違うという事を知り、その事実を受け入れるようにしてみてください。
自分と違う価値観を無理して受け入れる必要はありません。
ただし、価値観が違うという事実を受け入れてください。
そして価値観が違う結果おこっている不具合には、自分は罪悪感を感じる必要は全くないことも知ってください。
これを理解した上で異文化に出会うのと、
予備知識なしでギャップに悩まされ続けるのとは全く違います。
残念ながら年を取ると、頭が固くなり、別の価値観を受け入れることができなくなってきます。
でも、若いうちはまだ頭がやわらかくて、新しい価値観を理解できる可能性が大きいのです。
違う価値観と出会った時の対処方法、心の持ちようを訓練しておけば
海外へでて外国人と仕事をするときに、心の耐性がかなり違ってきます。
事実、私はフランスで生活する前に何度かバックパッカーとして海外をまわりました。
特に、中国での旅はもうスゴイ体験の連続で、
「いや、これは私の意思ではどうしようもないわー。理解できないわー。」ということに遭遇し続けました。
旅行ですから、心は折れずに帰国しましたが、価値観が違うことをこれらの貧乏旅行の間に体感できたと思います。
日本の文化や慣習は本当に素晴らしいものが多く、外国人に感動を与えることさえあります。
ですから、日本人としての価値観はぜひ後世にも残したいですね。
そして、若者にはこれからどんどん遭遇する「違う価値観」について
傷つかずに理解する能力を意識してほしいです。
これから日本はどんどん海外とつながっていきます。グローバル・キャリアはとっても身近なものなのです。
明日、そのあたりの事も書きますのでぜひお読みください。
弟妹達が、どんどん世界に目を向けて活躍してくれますように。
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