毎年秋に奈良国立博物館で開催される正倉院展。
今年も行ってきました。
「正倉院(しょうそういん)」とは?
「正倉(しょうそう)」とは古代、もともとお寺や役所の書類や宝物の保管する倉庫のことを指しました。
古代には日本国内にたくさんの正倉が存在しましたが、1000年以上の時がたちほとんどの正倉は消失してしまいます。
現存する東大寺の正倉院は国内でほぼ唯一のものとなり、今では「正倉院」といえば奈良の東大寺のものをさします。
この正倉院には8世紀の貴重な書類や聖武天皇ゆかりの宝物(ほうもつ)が多く保管されています。一度にすべてを展示し続ける事はスペースやセキュリティの問題に加えて、作品の劣化が懸念されるため実際不可能です。
したがって、毎年秋の2週間に厳選された作品が奈良国立博物館に展示されるのです。
2018年秋の正倉院展 目玉は3点
2018年代70回正倉院展は10月27日(土)~11月12日(月)の期間に開催されました。
入場料は大人一名1100円。このチケットで常設の仏像展示もみる事ができます。
土日祝はだいたい1~2時間待ち、平日は15~30分待ちで入場できました。やはり物凄い人気ですね。
今年の目玉は主に3点(私的な判断です)。
1.玳瑁螺鈿八角箱
奈良国立博物館ウェブサイトより引用
「たいまいらでんはっかくのはこ」と読みます。
螺鈿細工とは、夜光貝の貝殻をつかった家具装飾のことです。真珠のようにつややかに輝く貝をさまざまな大きさに削り、机やいす、箱や飾り棚などに張り付けていきます。
この八角箱は夜光貝と、赤い彩色の上に琥珀をはってあり何とも豪華です。
1300年まえに作られたとは思えない輝き。すごいですね。
2.沈香木画箱
奈良国立博物館ウェブサイトより引用
「じんこうぼくがのはこ」と読みます。
これは献上する品物を入れる箱で、特に有名な品だそうです。
たくさんの鹿が描かれており、昔から奈良には鹿が多かったんだなぁと感じました。上部の絵は鹿ではなく、伝説上の動物だそうです。
といっても、鹿とおなじ背中に斑点があり、色が青いという違いだけのような気がしますが。
驚くのは、この絵の上に水晶を板状に加工してはりつけている点です。
現代ならアクリル板をはるところですが、1300年前にそのような素材はないわけで、代わりに水晶(クリスタル)を使用しているのです。
かなりの強度がある石ですから、こんなに薄く平らに透明なまま仕上げるのは至難の業だったはず。びっくりしました。
3.犀角如意
奈良国立博物館ウェブサイトより引用
「さいかくのにょい」と読みます。
サイの角が素材につかわれいることからこう呼ばれています。如意というのは僧侶が法会(仏教の儀式)に使う持物(じもつ)のことです。
孫の手のように、 先端は手のようになっています。
近くで見ると細工が細かく、様々な素材で装飾がほどこされており、とっても豪華です。
小さくてみづらいとおもいますので、ぜひ奈良国立博物館ウェブサイトからチェックしてみてください。美しいです。
率直な感想(どうでもよい余談です)
上記の通り、展示品はどれも素晴らしく、貴重で美しいものでした。
螺鈿の美しさには目を奪われましたし、1300年前につくられたこういった作品が現在にも通ずる美であることに、人類の営みの普遍性を強く感じます。
こういった商品が展示されることは本当に素晴らしいことだと思いますが、美術品の展示の方法については色々考えさせられます。
例えば、私は10月早々にフェルメール展へ足を運びました。
フェルメールは大変な人気画家ですので前回もごった返しでまともな鑑賞ができず、展示場の課題となっていたようです。
今回は日にちと時間帯を指定したチケットを事前に予約購入するというスタイルでした。
チケットは2500円と割高で、時間指定にもかかわらず15分以上並ぶという不便さでしたが、確かに鑑賞はゆっくりできました。
それとは対照的に奈良国立博物館は入場制限なくどんどん人を入れていきます。当然、中はごった返し。
率直に言って不快な思いをたくさんしました。作品のすばらしさがなければ、悲惨な一日でしたね。
8割が60歳以上の高齢者という印象でした。
失礼は承知で書きますが、一部の老人の遠慮のなさ、あつかましさに辟易し、加齢臭もひどく、微妙な痴漢行為もあって散々・・・。
ものすごい人数がつめこまれているので、人気作品のまえは押し合いへし合いになっています。
展示ウィンドウ前に3列ぐらいに重なって鑑賞しているのですが、厚かましい老人は、杖や酸素ボンベのカートを私の足の上にひっかけて割り込んできました。びっくりです。自分より若いものは、場所や順番を高齢者に譲って当たり前と思っている人もいるようです。
最前列で鑑賞している時に、後ろから微妙な触り方をしてくる老人もいました。
中年女性が痴漢にあっても、自意識過剰といわれるのがいやで積極的に訴えたり抗議することは少ないです。減るものでもないですし。でも若い時に痴漢にあった経験は誰にでもあるわけで、偶然なのかわざとなのかはわかります。不愉快きわまりないです。
あと、お年寄りって口臭ひどいんですね。展示ウィンドウに向かって連れとペラペラお喋りしながら鑑賞している人たちの口臭が跳ね返ってきて絶句。
私も口臭気を付けようと強く思いました。
加齢臭も、これだけの人数が密集しているとはっきりわかります。
年齢を経るとやはり色々と変化が現れるんだなと。いつかは私も同じようになるわけですね。何か予防できるのか調べなくては。
時間予約制のフェルメール展に来場する人と、正倉院にくる人は属性が若干違うと思います。それにしても、やはり奈良国立博物館はもう少し入場制限や観覧マナーの周知など何か対策必要ではないですか?
美術館はいずれ観覧者がすくなくなり、運営が難しくなります。
きちんと若い方を美術ファンとして育てるためには、最低限の環境が必要ではないでしょうか。
正倉院展にも若いカップルが何組か来ていました(素敵ですね、美術館デート!)。
でも若い女性が一人で来て、はたしてどんな印象を受けて帰ったのか気になります。
私は美術が大好きですから今後も美術館通いは続けます。
けれど正倉院展のような雰囲気はもううんざり。来年は金曜日のナイト展示にさらっと行くだけにします。宿泊費や交通費がもったいないですけど。
くやしいけれど、行かないという選択肢はないんですよね。こんな国宝を観る機会はほとんどないのですから。
と、余計な話をしましたが。
奈良にはすばらしい国宝が多く展示されています。
興福寺にも阿修羅像はじめスゴイお宝がたくさん展示されていますので、ぜひ一度足をはこんでみてはいかがでしょうか。
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