こんにちは、Amyです。
昨日はフランス人のバカンス事情についてお話ししました。
今日は、フランスでは若者・新人の扱いはどうなっているのかをお話しします。
フランスでは、職業高校にいる間に、実際に見習い研修として会社で働くことになっています。学校と会社を2週間ずつ交互に通い、学校と会社が連携して見習いを育てていくシステムがあるんですよ。
さて、具体的にどんなシステムなのでしょう。
目次
☆ フランスの子供たちの職業選択は早い
☆ フランスの新人教育システムとリセ(職業高校)の関係
☆ フランスのスタージュ(研修)制度
☆ かつて日本には新人教育制度があった
☆ 若者がんばれ
☆ フランスの子供たちの職業選択は早い
まず、フランスでは子供たちがかなり早くから自分の職業を具体的に想定しています。
日本はサラリーマンが圧倒的に多い国(戦前はそうではありませんでした)ですが、
フランスやその他欧米国は自営業の割合が高いです。
農業大国であるフランスは、シードルをつくるリンゴ農家や、ワイナリー、チーズを作る酪農家、畜産農家、果樹園農家、レストラン、個人商店などなど、家族経営の小規模ビジネスがたくさんあります。
ですから、子供たちも家業を幼いころから手伝っており、「職業」というものがごく身近に想像しやすいのでしょう。
家業を継ぐつもりの子供たちは、職業選択の意識をかなり早くから持っています(小中学生)。
もちろん中には家業を離れて別の勉強をしたい子供もいますし、大学へ進学する人たちもたくさんいます。
自営業者の子供たちの影響で、サラリーマン家庭の子供も比較的早くから具体的な進路を考えていることが多いといえます(中学生位から)。
日本は高校や大学あたりに進路を考える場合が多いですね。
☆ フランスの新人教育システムとリセ(職業高校)の関係
日本の高等学校は普通科がほとんどですが、フランスの高校にあたるリセは、大部分が専門性のあるいわば職業高校(リセ)です。
例えば、畜産農業専門、ホテル・サービス業専門、チーズ製造専門、ワイン造り専門、革製品職人専門、などなど、1つの職業にしぼって3-4年間勉強する公立の職業高校が多く存在するのです。
そのような職業高校では、2年生、3年生になると2-3週間ずつ学校と職場とを行ったり来たりして仕事を学ぶアプランティサージュというシステムがあります。
2-3週間というのは一般的な例で、職種や企業側の条件によって異なります。
アプランティサージュ”apprentisage”とは、フランス語で学ぶという動詞 apprendre
に由来しており、研修の一段階前、「見習い研修」という意味です。
通常、ひよっこたちは親方や先輩から「アプランティ」と呼ばれます。
たとえば、ホテルマンになるためのリセでは、2週間学校で授業をうけ、2週間は実際にホテルで見習い研修生として働きます。
学校の授業、つまり机上で習った様々な内容を、実際にホテルへでて実践するのです。
お客様の対応、トラブルがあった際のマニュアル、各部署との連携の仕方、セキュリティチェックの具体的な方法などなど、
授業で聞いて頭で想像していた内容を、自分が現場で具体的に動いて「体得」していきます。
ここでたくさん失敗をしたり、学んだりしていきます。
2週間後に学校へ戻るころには、ホテル側の教育担当者からは、
● レセプションで英語対応ができていない。
もっと英会話の勉強を強化するように。
● 購買仕入部の研修の際、上代、売価、納価、コストなどの意味を理解していなかった。もう一度基本的な用語の意味を確認が必要。
● 言葉遣いがなっていない。敬語をきちんと使えるように指導を。
このような具体的な改善点が高校へ申し送りされています。
学校にもどって、指摘された部分をとくに重点的に勉強しなおす、ということです。
学校の先生も、ほとんどの場合その職業の経験がある人(この場合ホテル勤務の経験者)が教務を担当しています。
学校側とホテルの教育係が連携をとり、その高校生が一人前になるように不得意分野の情報をシェアしているんですね。
もちろん、いろんな性格の先生、教育係がいますから、全員熱心に指導してくれるわけではありません。
が、研修システムとして、最低限の申し送り文書のやり取りはなされています。
ドイツやフランスは中世から続いている徒弟制度、マイスター制度などが戦争で分断されることなく、連綿と職業哲学として受け継がれてきました。
これが、現代も形を変えて、職業高校とアプランティサージュとしての見習い研修として、活用されているのですね。
ちなみに、見習い研修の間も、少しお給料はもらえます。アルバイトでお小遣いを稼ぐのと同じような事をして、専門性を磨ければ本人も納得ですね。
まだ使い物にはならないけれど、安い労働力を使う企業側にも多少メリットはあるようです。
それに、これは国が作っているシステムですので、
企業側は補助金を受け取る場合もあるそうです。
こうして、職業高校を卒業したころには、ある程度仕事を理解している状態で就職できるというわけです。
高校生にとってはとても心強い準備段階だと思いませんか?
☆ フランスのスタージュ(研修)制度
もちろん、皆が職業高校へ進学するわけではありません。大学へ進む人もいます。
大学をでた後、もしくは方針転換で職種を変える時など、
特に26歳未満の若者が社会にでる場合にはスタージュという研修システムがあります。
いわゆるインターンシップですね。
研修期間は普通の雇用契約とはちがった条件と給与体系となっており、国からもそれぞれに補助金がでることが多いです。
まだスキルのない若者がステップアップするために、ごく普通に活用するシステムです。
お気づきでしょうか。
フランスでは新卒一斉採用もなく、新卒に限った新人教育などほとんどありません。
上下黒のスーツで一斉にエントリーシートを出して就活を始める日本の状況は彼らにとっては不思議な現象です。
フランスではその職業につくために、皆自力で研修を重ね、その履歴書をもって正式雇用にこぎつけます。
企業側も新入社員教育を特別に用意しなくても、職業高校と研修制度である程度まかなえている、というのが現実です。
☆ かつて日本には新人教育制度があった
1990年代半ばまで、日本のほとんどの企業では、新入社員に対して一定期間「研修」をしていました。
終身雇用が当たり前の時代でしたから、当時は合理的なシステムだったのだと思います。
研修では、その会社の業務内容を理解する他、スキルの指導があったり、同期や先輩社員との親睦をはかったりと、新入社員にとても気を遣ってくれました。
バブル期入社の人たちは、素敵な観光地でホテルや別荘地を借り切っての、まるで観光旅行のような研修も多かったそうです。ちょっとうらやましい。
しかし、この新人教育には時間とコストがかかります。
担当者をつけるだけでも会社には経済的負担が生じますので、バブル崩壊後は中小企業では新人教育に経費をかけることができなくなってきました。
現在は大手企業や、医療現場等ではきちんと新人研修が行われていますが
それができない企業もたいへん多いというのが現状です。
その場合、各部署の管理職や先輩社員が新入社員の教育を個々に受け持つことになります。
ここで問題になるのは、下記のような点ではないでしょうか。
● 管理職や先輩社員が必ずしも教えることが得意・好きとは限らない。教育方法が人によってバラバラ。
● 自分の仕事を抱えて、さらに新人教育を任されているため、教育の時間や労力が十分に確保できない。結果、十分に新人指導ができていない。
そうすると、新入社員はわからないことが十分に消化されないまま仕事を続けているケースがでてきます。
若い人材は本当に大切な存在です。
社会に出たばかりの若者に対して、何らかの形で、その後の仕事・キャリアへ導く教育制度ができればいいな、と思います。
今からフランスのようなシステムにするのは無理ですから、
何か、キッザニアの大人版のような、若者の職業準備期間的なものができるといいのですが。
☆ 若者がんばれ
私は、このブログで若い方を応援していきたいです。
今の日本、若い方たちには不安な要素が多いと思いますし、厳しい現実がたちふさがっています。
私たち中年世代の努力不足もあるかもしれませんね。ごめんなさい。
それでも、真面目にがんばっている若者がたくさんいます。
ちょっとした手助け、ちょっとした指導で、みなさんが成長する姿を目の当たりにすると、とてもうれしいです。
出来る限り、わかりやすい言葉で物事を説明し、理解のきっかけを提供したいと思っています。
みなさん、がんばってね。
心から応援してます。
年の離れた弟妹達へ、皆の仕事が少しでも楽しくなりますように。
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