こんばんは、タイトルを読んでここへ来てくれた方、歓迎です。
今夜は、20年以上かけて私の人生で何度も関わってしまうある物語についてお話しさせてください。
おととい、期せずしてある映画を見てしまいこのブログを書いています
物語はドイツ人小説家Patrick Süskind パトリック・ジュースキンが描いた『Das Parfume 香水 ~ある人殺しの物語~』1985年の作品です。
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舞台背景
18世紀フランスが舞台となった小説で、超人的、異常なまでの臭覚を以て生まれた孤児Jean Baptisteジャン=バティストが主人公です。
彼は貧窟街で非嫡出子として不幸な産まれ方をし、人買いの手に渡り皮革職人の元でこき使われる運命に。
これはこの時代では珍しい境遇ではありません。重要なのはその境遇や出自ではなく貧民である彼が異常なまでの臭覚に恵まれていたこと。
どれほど恵まれていたかはぜひ物語か映画で確かめてください。
とにかくたぐいまれな臭覚のおかげで香水店の下働きまでしたジャン=バティストですが、彼は『運命の香り』に出会ってしまいます。
けれど、香りは保存できません。
風景は写真に保存できますし、音楽はCDに収録できるでしょう。
でも、特定の香りをあなたはどうやって保存しますか?
常人にはできません。
が超人には記憶に焼き付けることができます。
運命の香りに出会った瞬間
そこからジャン=バティストが全人生をかけた使命を遂行し始めます。
この作品はそんな特異な男の記録(ジュースキンの創作)ですが、ともかくJean Baptisteの執念とその香りの描写がすさまじい。
多くの人が気づいていませんが、人の人生を豊かにすることの一つに明らかに『臭覚・香り』という要素があるのです。
怠惰な日々を送っている中で感覚が鈍化したあなた、
忙しさに流されてこまやかな感情を失ってしまったあなた、
日常に埋もれて感覚が鈍化しつづける現実に恐怖するあなた、
この『香り』はまちがいなくあなたへのカンフル剤となります。
媒介(各国翻訳と映画)
1985年にドイツ語で原書がでてからすぐ、
同年日本語訳が発売されました。
46か国語に翻訳、1500万部を売り上げる世界的ベストセラー。
私は89年と91年に日本語訳、96年にフランス語訳、英語訳を読んでいます。
2006年に『パフューム ある人殺しの物語』としてベン・ウィショー、
ダスティン・ホフマン出演で映画化。
18世紀パリの民衆の雰囲気が存分に伝わる秀作です。
歴史的な知識の深い方は、セットが19世紀の仕様である旨、差し引いてみることをお勧めします。群衆演出は18世紀そのものです。
と言いつつ、私は原作小説だけで様々な課題を自らに抱えていたので映画を見るつもりはまだありませんでした。
あの世界観を映画にするのは相当難しいだろうと思いましたし、
それ以外に自分で検証する事項が多すぎたからです。
私は仕事の一部に香りが関わっており、私自身、普の人とは違う臭覚をもっています。訓練してそれを専門職につかってきた経緯があります。
五感 香り(プルースト効果など)
所謂、一般教養を備えた方であればプルーストをご存知でしょう。
あらすじを知っているだけか全て読んでいるかで雲泥の差がありますが、20世紀以降の小説家が多大な影響をうけた名著です。
私は原書フランス語、日本語訳ともに完読しています。
(私が自信をもって誇れることの一つです。自慢ごめんなさい)
ご興味のある方は無条件一択で鈴木道彦氏の翻訳をおすすめします。
この中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸して食べるシーンがあります。
このマドレーヌと紅茶の香りが一体となって口腔にひろがった瞬間、彼は幼い日々に過ごしたコンブレーの祖母宅での様々な経験を思い出します。
祖母宅ではよくマドレーヌと紅茶が一緒に出され、幼い彼は同様の食べ方でその胸を祖母と母との甘やかな思い出でいっぱいに満たしていたのです。
これを味覚というひとがいますが、それは違います。
単に臭覚が劣っている人の錯覚で、これは明らかに臭覚の記憶です。
このように過去に経験・体験した臭覚を、再度同様の香りを嗅ぐことで記憶を取り戻す事象を『プルースト効果』といいます。
私自身、臭覚が優れておりさらに20代で特殊な訓練をしました。
現在もその関係の仕事をしていますが、臭覚の持つ途方もない可能性と影響力には感激もし、恐怖することも多々あります。
余談ですが、例えばよく知っている香水(市販の香水は70ほど所持、400種以上記憶しています)をつけている人の残り香を嗅いだとき・・・
その香水のトップノート、ミドルノート、など時間による香りの変化と、その人の体臭の計算でいつ何時間ほどその人物がそこに滞在したかがわかることもあります。
恋人の一線を超えた浮気はとてもクリアに解ります。
取引先とのアポに出向いて、その方が直前に誰と会っていたか予想で来たことも複数回ありました。
ここであまり話すのは場違いですが、香りによるIncidentは本当にたくさんあるのです。
40代になった今、自分の気分が落ち込んでいる時や
お会いする取引先や知人とどういった距離感を保ちたいかによって、どのような香りで武装したり癒したりすればよいかがわかります。たいへんな財産で、薬に頼らず、死ぬまで乗り切れそうで感謝しかありません。
副作用が多く、政治的・金銭的思惑が絡む精神科医療よりも、
アロマテラピーとは全く別次元で別物の
『香りのカウンセリング』が日本にもそろそろ存在してもよい時期かもしれません。
香りがあなたの人間関係を豊かにする
何事も仕事にすると余計なストレスを引き受けることになりますが、
好きでいること、趣味の範囲にとどめることで最大限に『あなたの好きな物』を楽しむことができます。
私のように香りが仕事の一部となってしまうと、神経質になることが多く、世界的に素晴らしい香水でイヤーな出来事や人物を連想してしまうという悲しい事実も。
ちょっと香りっていいな♪と思っている一般の方こそ、この体臭が少なく四季の植物の香りが鮮明な日本で
存分に香りの癒しを享受できるはずなのです。
あぁ、文章で伝わらないことがもどかしい。
百聞は一香にしかず・・・あなたの香りを調香してあげたい・・・。
日本では、残念ながら香水の付け方が下手な女性が多く、販売側も未熟な売り手が多いために「香害」でいやな思いをしている方が一定量存在すると思います。
「香害」を不快に感じたり、加齢臭や口臭に敏感な方も多いと思いますが、
日本人は臭覚に優れている割合が高いのです。
「香害」はわさび10倍の罰ゲーム寿司、タバスコ1本振りかけたピザ並の非常識と理解して、
正しい発香で何がどのように香るか、興味を持ってください。
香りのメカニズムはかなりロジックです。
ある素材はトップノートでこの香り、3時間たてば次の香りに変化する、という具合で、数学のように数式化することが可能です。
私も脳の中に香りのアーカイブがあり、習得した香りはきちんと分類化されています。
ただ、数学は数字で書面に書いた理論ですが、
臭覚については数字のような共通言語が日本ではありません。
でも、数学同様ロジックで明確に分類化が可能です。
あなたの好きな香りを
すみません、暑苦しく語ってしまいました。
が、このブログをここまで読んでくださった方は、
ぜひパトリック・ジュースキンの『香水』を読むか、映画を見て頂きたい。
それ以上に、香水を一つ買い求めてほしい。
完成度の高い香水は高額です。30mlボトルで5,000~3万円くらいしてしまいます。
が、ヤフオクや駅ビルに入っている香水店であれば同じ香水を2mlや5mlの少量でお安く販売していることがあります。
海外旅行をする方は、かならず免税店であまたの香水サンプルを香ってみて下さい。
直接香ると2-3でギブアップなので、きちんと香水用のしおりを使ってくださいね。
年齢も性別も関係ありません。
あなたをしばし幸福にする香りを知ることは、あなたの人生を豊かにするツールの一つとなりえます。本当です。
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